Großwetterlage 「広域気象状況」「汎天候」

自宅から撮影された夕焼け

この記事は、もともとは引っ越し前のサイトにて2021年1月4日に「Großwetterlage 「広域気象状況」「氾天候」」のタイトルでアップロードしていたものです。このたびサイトごと引っ越しするにあたり、細部に手を加えてアップロードし直しました。
なお、ずっと気付いていなかったのですが、前のサイトではタイトル欄に間違えて「氾天候」と書いていました。正しくは「汎天候」です。m(_ _)m

一定の気圧配置や気流は、ある程度の期間(数日もしくはそれ以上)、同様の状態が持続することがあります。それらの気圧配置や気流の状況をいくつかの Muster (n. -s/-) 「型」に分類し、それぞれに固有の呼び名を付けたものが Großwetterlage (f.) です。

提唱は Franz Baur による分類です。彼は主に高・低気圧、前線の位置や移動方向、天候 Witterung の状況などから、19世紀末から数十年にわたるヨーロッパ領域での日毎のおおまかな気圧配置を記述したカタログを制作しました。

Franz Baur によれば、 Großwetterlage は以下のように定義されます。

die mittlere Luftdruckverteilung eines Großraumes, mindestens von der Größe Europas während eines mehrtägigen Zeitraumes, in welchem gewisse Züge aufeinanderfolgender Wetterlagen gleichbleiben, eben jene Züge, welche die Witterung in den einzelnen Teilgebieten des Großraums bedingen.

Katalog der Grosswetterlagen Europas (1881-2004) nach Paul Hess und Helmut Brezowsky. 6., verbesserte und ergänzte Auflage, Potsdam-Institut für Klimafolgenforschung, 2005, p.9

[日本語訳:2日以上の時間幅のあいだ、少なくともヨーロッパ程度の規模をもつ広範囲においてみられる平均的な気圧配置。その時間幅では、次々に生起する気象状況が持っている諸特性は、一定のまま保たれる。ただまさにその特性こそが、その広範囲の中にある各地区領域の天候をそれぞれに左右しているのである。]

訳は私訳です。あと、上記の引用テキストは Hess und Brezowsky (2005) の資料からの孫引きです。 Hess & Brezowsky の方の資料はドイツ気象局の Wetterlexikon の Großwetterlage の項目の下に PDF ファイルのリンクが貼られていますので、そこから読めます。参考文献欄によると、元資料は Baur, F.: Großwetterkunde und langfristige Witterungsvorhersage. Frankfurt, 1963. とのこと。

第二次大戦後、高層での尾根や谷の位置、気流の状況なども加味した上でさらに改良が加えられました。 Hess & Brezowsky による最新版(2005年第六改訂増補版)では、百年以上の長期における日ごとの気圧配置を月単位でまとめた分類表と、典型的な気圧配置を例示した天気図が詳細な解説とともにまとめられています。最新版では29の型と1つの遷移型が区別されているようです (p.11) 。

一例をあげると、上空で偏西風が卓越する際には West-Wetterlage もしくは Westlage 「西風型」という語が用いられ、低気圧が地中海からポーランド方面へと北東進する気象状況では Vb 型( V はローマ数字の5)などが予報解説文などでもよく用いられます。

日本でも西高東低型、南高北低型、梅雨前線型などの気圧配置の名前が天気予報などでも広く使われていますが、ドイツでの分類はとにかくシステマティックです。広く東ヨーロッパから北大西洋までを含む領域における対流圏中・下層の気圧配置や気流の状況などに基づいた気象状況が、アルファベット記号の組み合わせにより細かく分類されています。

この Großwetterlage という語の後半にある Wetterlage (f. -/-n) 「気象状況」は、狭い一地域で1日程度の短い期間、特定の状況があまり変化せず持続した場合に、その状況を表す言葉です。で、それよりも時間的、空間的にもっと大規模なバージョンということで、「大きい」を意味する groß- を前に付加した語が Großwetterlage です。なので、全体としては「大局的な気象状況」くらいの意味合いです。

ただ日本語の定訳はまだ無いようで、小学館『独和大辞典』 (1985, 1990) を引くと「広域気象状況、天気概況」という訳語がありますが、研究社『独和中辞典』 (1996) では「(広域・長期の)気象概況」とあり、『平凡社版気象の事典』 (1986) では「天候」の欄に「汎天候」という呼び方があげられています (p.383) 。

Großwetterlage についてはドイツ気象局の気象語彙集 Wetterlexikon の Großwetterlage のページに詳細な分類基準についてのリンクが貼られています。ドイツ気象局による過去及び直近の天候の分析結果は Leistungen 「業績」のカテゴリー中の Großwetterlage のページから見られます。

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