Klima 「気候」
様々な期間にわたる長期的な傾向を扱う、いわゆる「気候」は Klima (n. -s/-s, Klimate) と呼ばれます。昨今では「気候変動」 Klimawandel (m. -s/ ) 、 Klimawechsel (m. -s/-) 、 Klimaänderung (f. -/-en) の形でしばしばメディアでも取り上げられる重要なキーワードにもなっています。
Witterung (f. -/-en) 「天候」では短時間のちょっとした変化は平均化され、その数日単位での持続、もしくはゆるやかな変化傾向が問題とされますが、 Klima 「気候」においては、より長い期間における変動が平均化され、月、季節、年単位の変化傾向が最低でも数十年の長期スケールで評価されます。
様々な時間スケールにおける Klima
ただ、一口に「気候」といっても時間的、空間的に様々な切り取り方があります。例えば仮にある地域である程度の期間、平年値から大きくそれた状態が観測されたとして、それが果たして「異常気象」に当たるのか、どの程度の「異常」( Anomalie (f. -/-n) といいます)なのかを論じる際には、まずは観測されたその気象要素の値を平年値と比較して、そこからの偏り、「偏差」 Abweichung (f. -/-en) を算出することが必要になります。
その比較対象となる「平年値」( langjähriger Mittelwert (m. -es(-s)/-e) もしくは vieljähriger Mittelwert )ですが、これには通常は30年間の範囲を参照期間として算出された値が用いられます。(研究目的によっては異なる期間を参照期間とすることもあります。)この参照期間のことを (klimatologische) Referenzperiode (f. -/-n) といいます。通常は10年ごとに更新される30年値を用いるため、2021年からは、1991年から2020年までの30年間が参照期間として使用されています。(もちろんそれ以前の参照期間が使えなくなる、というわけではありません。)
具体的には、平均値だけでなく、極値、さらには発生頻度や継続期間など様々な要素の平年値がこの範囲を元にして算出されます。(詳しくはドイツ気象局 Wetterlexikon の Klima の項目を参照のこと。)
なお、どの期間を参照期間とするか、どれくらいの幅を取るか、等々によって、同じ値であってもその偏りは当然ながら変わってきます。また近代的な気象観測が始まる前の昔の年代の気候を扱う、いわゆる Paläoklimatologie (f. -/ ) 「古気候学」においては、現代からどれくらい隔たった時代を扱うかにもよりますが、対象となる期間はさらに長くなります。
様々な空間スケールにおける Klima
空間スケールの分類に関しても、特に厳密な区分が定められているわけではなく、地域のどの特徴に着目するかに応じて様々な気候区分が用いられています。一般的には最低でも数百、通常は千キロ単位の大きなスケールでの気候区分 Makroklima 「大気候」と、せいぜい数百メートル、小さい方はミリ単位の狭いスケールでの平均的気象状態 Mikroklima 「微気候」とがあり、その中間を Mesoklima 「中気候」がカバーしていると考えればいいと思います(かなりざっくりですが)。
以下にドイツ気象局の Wetterlexikon の Klima の項目の中からいくつかピックアップしてみます。
- Makroklima (n.) 「大気候」(千キロ単位の大スケールの気候)
- Mesoklima (n.) 「中気候」(大気候と微気候の間)
- Regionalklima (n.) 「地域気候」(地域の植生など)
- Stadtklima (n.) 「都市気候」(都市化された地域の気候)
- Mikroklima (n.) 「微気候」もしくは「小気候」(数百m程度までの小スケールの気候)
これらはほんの数例に過ぎず、これら以外にも様々な「〜気候」があります。また文献によって、各用語が表す空間スケールにも微妙な差異が見られます。(用語の日本語訳は、「地域気候」以外は『平凡社版気象の事典』 (1986) を参考にしました。)
「中気候」がカバーする範囲はかなり広く、いわゆる「ヒートアイランド」 städtische Wärmeinsel (f. -/-n) など、都市スケールの気候もここに含まれます。(ヒートアイランドについては、ドイツ気象局の Stadtklima – die städtische Wärmeinsel (Deutscher Wetterdienst) のページも参照のこと。)また Regionalklima (n.) 「地域気候」というのは、「中気候」のうち、農業などにおける土地利用や森林分布などと密接に関わる概念のようです。
なお、日本では「微気候」と「小気候」がさらに区別されることがあります。『平凡社版気象の事典』 (1986) によれば、「小気候 (Kleinklima) 」が狭い地域での水平方向での差異を問題にするのに対し、「微気候 (英:microclimate) 」では地表に接した部分から 1.5m くらいまでの鉛直方向での気温差などを問題にするようです (p.433) 。 また日本語では微気候との関連で「室内気候」とか「屋内気候」などの概念が取り上げられることもあります。
Klima-Michel-Modell
ところで、ドイツ気象局では Klima-Michel-Modell (n. -s/-e) という数値計算モデルを開発・運用しているのだそうです。これは季節に合った服を着た平均的な人間(35歳/男性/身長175cm/体重75kg)が平均的な動作(散歩程度の速さで歩行)をする場面を想定し、その人体の熱平衡状態を保つ上で周囲の環境の気温や湿度、日射等々がどの程度負担になっているかを計算します。早い話が gefühlte Temperatur (f.) 「体感気温」を定量的に算出するための数値計算モデルのようです。(詳細についてはドイツ語版 Wikipedia の Klima-Michell-Modell 及びドイツ気象局の気象語彙集 Wetterlexikon の Klima-Michel-Modell のページを参照のこと。)
ここでの Klima は、いわゆる「気候変動」などにおける「気候」ではなく、時間的にも空間的にも個人の周囲のごく限られた狭い範囲内を対象とした、いわゆる「微気候」「室内気候」レベルの概念と考えて問題ないと思います(モデルは屋外での人間活動を想定してますが)。


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