Wetter 「気象」および Wetter- で始まる複合語

広島市江波山気象館の屋上

この記事は、もともとは引っ越し前のサイトにて2020年12月23日に「Wetter 「天気」」のタイトルでアップロードしていたものです。このたびサイトごと引っ越しするにあたり、情報を加えてアップロードし直しました。

様々な “Wetter”

Wetter (n. -s/-) は、「気象」「天気」を表す最も一般的かつ基本的な単語です。英語の weather とももちろん同根語です。

専門用語としての Wetter は、ある地点もしくは地域における、特定の一時点もしくはごく短いタイムスパンで観測される具体的な大気の状態もしくは現象を指して用いられることもあります。この意味は、数日程度の幅のある期間における平均的な気象状況を表す Witterung (f. -/-en) と区別する文脈で用いられる際には特にはっきりと認められます。

Wetter- で始まる複合語

複合語の一要素としても、例えば Wettererscheinung (f. -/-en) 「気象現象」、 Wetterbeobachtung (f. -/-en) 「気象観測」、 Wetterbericht (m. -(e)s/-e) 「気象通報」、 Wetterdienst (m. -es(-s)/-e) 「気象業務」「天気相談所」、 Wetterkarte (f. -/-n) 「天気図」、 Wettersatellit (m. -en/-en) 「気象衛星」、 Wetterwarte (f. -/-n) 「測候所」、 Wetterhütte (f. -/-n) 「百葉箱(ひゃくようばこ/ひゃくようそう)」など、実に様々な語との組み合わせが辞書には掲載されています。気温、湿度、気圧、風向、風速、雲量、日射、降水量等々、気象と関係の深い物理量を指して Wetterelement (n. -(e)s/-e) 「気象要素」という言葉が使われることもあります。

「気象現象」

「気象現象」については、上であげた Wettererscheinung 以外にも Wetterphänomen (n. -s/-e) という言い方もあるのですが、こちらはラテン語を介して古典ギリシャ語にまで遡る外来語 Phänomen (n. -s/-e) 「現象」との組み合わせになっています。他にも meteorologische Erscheinung (f.) とか meteorologisches Phänomen (n.) などのように、 Wetter を使わず「気象(学)の」を意味するラテン語由来の形容詞を使う言い方もよく目にします。これらは大気中の諸現象を動的過程、静的状態を問わず普遍的に表現できる語です。これに対して Wettergeschehen (n. -s/-) や Wetterereignis (n. -nisses/-nisse) などの言い方もあるのですが、こちらはある現象が発生したり、ある場所の気象になんらかの変化や動きがあった場合に、その現象そのもの、もしくはその推移を指して用いられているようです。あえて訳せば、「気象現象の発生」もしくは「天気(天候)の成り行き」といったところでしょうか。いずれもよく見かける表現です。

Wetterküche

他にも、少し変わったところでは Wetterküche (f. -/-n) という語があるのですが、これは直訳すると「お天気のキッチン」となります。紙の辞書には載っていない単語ですが、気象ブログなどでは時々見かけます。天気の変化が激しく、活発な低気圧や前線、高気圧などがひしめき合って天気図がにぎやかになっている時に、それを様々な食材や調味料、調理器具が所狭しと並んでいるキッチンに例えた言葉なのではないかと思われます。さすがに公式の天気概況文や予報文には出て来ませんが、ヨーロッパ各地で低気圧や前線が活発化して天気図が大きく様変わりすることが予想されている時には、一般向けの気象関連記事などでも時々この語を使って解説しているのを見かけることがあります。

Wetterfrosch

Wetterfrosch (m. -es(-s)/-frösche) は、直訳すると「お天気ガエル」、早い話がアマガエルのことです。昔、アマガエルは地面からどれくらい高い位置に上るかによって天気を予知することが出来る、という俗信がありました。日本にも「ツバメが低く飛ぶと雨」などのことわざがありますが、あれと同様の発想かもしれません(高さは逆ですが)。かつてはこのアマガエルを足場になる木切れと一緒にガラスの容器に入れておき、その中でどれだけ高く登るかを見て天気予報に役立てようとした、などという逸話も残っています。

ただしこれは実話ではなく、単なる言い伝えというか、あくまでもドイツ人にとっての、いわば定番の気象ネタの一つ、くらいの位置づけの話のようです。日本にも「カエルが鳴くと雨」ということわざがありますが、ドイツ人はさらに踏み込んで、鳴く高さにまで着目した、ということなのでしょうか。なお、この語はここからさらに転じて、(男性)予報官や「天気予報マニア」のことを揶揄する俗語としても用いられるようになったようです(詳細はドイツ語版 Wikipedia, Wetterfrosch の項目を参照のこと)。

気象を測る昔の機器

Wetterhütte

日本の百葉箱(広島市江波山気象館)

上でもあげましたが、 Wetterhütte (f. -/-n) は「百葉箱」のことです。文字通りには「気象の小屋」を意味し、実際そのままの意味(「悪天よけの小屋」)でも使われています。また、「百葉箱」の意味では Thermometerhütte (「温度計の小屋」)と呼ばれることも多いです。他に Klimahütte (「気候の小屋」)と呼ばれることもあります。

Wetterhahn

Hahn (m. -(e)s/Hähne) は「雄鶏」のことなので、全体で「風見鶏」を意味します。風向を指し示す羽状、旗状のものを Wetterfahne (f. -/-n) といいますが、それが鶏状の外見をしている、もしくは鶏の形状をした板が上部に付いている、そういうものを Wetterhahn と呼びます。 Wetterfahne でネット検索をかければ、鶏以外にもいろんな形状をしたものの画像がたくさんヒットします。

Wetterglas

Wetterglas (n. -es/-gläser) もしくは Sturmglas ともいいますが、これは一言でいえばガラス製の簡便な気圧計です。発明者は不明のようですが、しばしば Goethe-Barometer (n. -s/-) 「ゲーテの気圧計」とも呼ばれます。仕組みは水銀気圧計と似ていて、中央の大きな球状のガラスには水と空気が入っていますが、こちらは上部が密閉されており、その下部から上の方に伸びた細い管の方だけ、上部が外気に開かれています。細い管の中の水面の上下でおおまかな気圧の変化傾向を読み取ります。

ただ、細い管の水面の高さは気圧だけでなく、まわりの温度によっても変化するため、気圧の厳密な数値の読み取りには向いていません。水面の上下から大体の天気の変化傾向をつかむのに用いられます。ガラスで凝った形を作ったり、水に鮮やかな色をつけたりして、インテリアとしても人気が高いです。私も以前国内向けのものを買ったことがありますが、パッケージを開けたら、色を付けるための染料や、中に水を入れるためのチューブが付いた注射器などとセットになっていました(下の画像参照)。

日本で売られている Wetterglas

Gallileo-Thermometer

話がそれますが、ガラス製のものとしては、他にも Gallileo-Thermometer (n. -s/-) という、ちょっと風変わりな形をした温度計があります。仕組みとしては密閉されたガラスの円柱の中に特殊な液体が満たされていて、その中に小さなガラス球がたくさん浮いています。小さなガラス球の中にはカラフルな色がつけられた液体が入っており、それぞれ温度の数字が書かれた小さな重りが付いています。ガラス球の横幅は円柱の半径よりも大きいため、それぞれの球の順番が入れ替わらないようになっています。どこまで浮かんでいるかによって温度を読み取るようです。

これも今となっては、厳密な気温の測定というよりは、やはりインテリア的な側面が強いようです。

Wetterhäuschen

Wetterhäuschen (n. -s/-) というのは、湿度 Feuchte (f. -/-n) から天気の大体の傾向が分かるように作られた工芸品です。 Häuschen (読み:ホイスヒェン)というのは「小さな家」を意味します。仕組みは毛髪湿度計を応用したもので、湿度に反応してまわるように設計された円盤もしくは棒の両端に2体の人形が据え付けられています。ミニチュアの家には2つの出入り口があり、湿度に応じてそれぞれの出入り口のどちらかから一体の人形が姿を現す仕組みです。乾燥していれば一方の出入り口から女性の人形が、湿っていればもう片方から男性の人形が出てくる仕組みになっています。あわせて温度計が設置されていることも多いです。今でもインテリア的なものとして売られています。

Wettersäule

また、かつては Wettersäule (f. -/-n) というものがあって、街の中央部の人が集まる場所に設置されていたのだそうです。これは直訳すれば「気象の柱」になりますが、ガラス張りの柱状の構造物の中に温度計、湿度計、気圧計、風向風速計などの設備が内蔵されており、リアルタイムでその時々の気象状況を市民に知らせる役割を果たしていたようです。(詳細はドイツ語版 Wikipedia の Wettersäule の項目及びドイツ気象局の気象語彙集 Wetterlexikon の Wettersäule の項目を参照のこと。実物の画像もこれらのリンク先で見られます。)ドイツでは昔から市民レベルでも自然科学に対する関心が高かったことを示す一例かもしれません。

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